MBIRA奏者 実近修平さんとの出会い

 今年の3月頃、名古屋に住む友人から、MBIRAという楽器の演奏会をアリアナの店舗を使って催せないかというメッセージをもらいました。

 アリアナは現在改修工事中だけど、仮店舗に使っていた場所は空いているので、演奏会に使用してもらっても構わない、と返答。店舗の引っ越し作業などで忙しいだろうけど、場所を使ってもらうだけなら問題ないだろうと高を括っていました。

 その後は、MBIRA奏者の方と直接LINEでのやり取りになったのですが、最初の段階からすでに、「仮店舗だった場所を使ってもらうだけ」と「アリアナで演奏会を催す」という認識の違いが生じていたので、宣伝活動もほとんど行わないままになってしまい、ギリギリになって急いでチラシを作ったりもしましたが、何せ店舗も開けていない状態では皆さんに充分お知らせすることもできず、引っ越し作業が思った以上にはかどらないのでチラシを配る暇もなく、参加者が集まらないまま演奏会の数日前になってしまいました。


 何でも安請け合いをしてしまう自分にウンザリしながら、MBIRA奏者の実近さんに、「このような状況なので、演奏会はキャンセルしていただいて全然構わない」とお伝えしたのですが、実近さんは、「キリムという織物に囲まれた場所で演奏したい」「●●さん(私)にぜひ演奏を聞いてほしい」と返事をくださり、4月7日の夕方にアリアナが仮店舗として4カ月間使用していた三進堂ビルにやってきてくれました。


 実近さんとは何度もLINEでやり取りするうちに親しみを感じていたのですが、実際に会ってみると、LINEでの印象以上にフレンドリーで親しみやすく、また自分を飾らない、自分を見せることを恐れない人だなという印象を受けました。

 「こんなに少ない人数なのに演奏していただいて構わないんですか」と尋ねると、本当に気持ちの良い笑顔で「ボクは演奏する気満々です!」と答えてくれました。


 「MBIRA」という楽器のことは全く知りませんでしたし、ジンバブエも名前を知っているだけ、「ショナ族」という部族がいることも知りませんでした。連絡をいただいてから、YOUTUBEで検索して聞いてみたり、実近さんに送っていただいたCDを聞いてみたりしたのですが、その印象はとりあえず「全く聞きなれない旋律である」ということ。ただ、その旋律をイヤホンで聞きながら作業をしていても不快な感覚は受けず、ずっと聞いていられました。


 さて、実際に聴く実近さんのMBIRAの演奏ですが、正直、安直な言葉にしたくない、と感じるほどに圧巻でした。

 MBIRAはショナ族に1000年以上前から伝わる土着信仰の儀式に使われる楽器で、その演奏は先祖への感謝を捧げ、生き抜くための智慧や力を伝えるためのものだということですが、勿論全く異なる文化圏で生まれ育ち、演奏を聞くのが初めての私に、そのメッセージが聞こえてくるわけはありません。それはそうなのですが、MBIRAの旋律を生で聞いていると、ピリピリする電気のような感覚が伝わってきて、演奏する実近さんと、あるいはこの音楽が持つパワーそのものとエネルギー交換しているような、そんな感覚を覚えました。でも、そういう感覚は、聞く人によって全く違ったものだろうと思うので、あまりここではグダグダ書きません。ご興味がある方は、ぜひ機会があれば、実近さんのライブを聞きに行っていただきたいなと思います。

 

 まったく自分とは縁もゆかりもなかった音楽に惹かれ、それをものにしようと何度もジンバブエに通い、実際に儀式で演奏するショナ族の奏者に認められ、この伝統の音楽を体得した実近さんの演奏する姿は、人生の不思議というものを改めて考えさせられるものでした。人にはそれぞれ、どうしようもなく惹かれるものが必ずあるのではないかと思います。ただ、それを心の羅針盤として進んでいく人と、そうでない人がいる。どちらが良いというわけではないですが、心の羅針盤に従った人の人生は苦難も多いですが得られるものは格別のものではないかと思います。


 今回実近さんの演奏を間近に聞かせていただけた私はとても運が良かったと思っています。実近さんは初めて会ったような気がしない方でしたが、またもう一度会えるかどうかは分かりません。アリアナで、またライブをしていただくことがあるかどうかも分かりません。出会いは一期一会。勿論チャンスがあれば、今度はちゃんと準備して、いろんな方に聞いていただける場をもうけられたらうれしいなと思います。


以上、実近修平 MBIRA演奏会「終わらない喜び


」についての雑感を綴ってみました。

演奏会の写真をアップできれば良かったのですが、あまりにも実近さんの奏でる音楽に聴き入ってしまっていたため、写真のことなんかはすっかり忘れていました。




追記 実近さんという演奏家から見たキリムについて、私が今まで気づかなかった視点で感想を聞かせていただき、新たなキリムの美しさを発見できました。先入観なく何かを鑑賞するというのは大切なことだと改めて思いました。